マルコス・テイシェイラ | 知られざるボサノヴァギターの職人

 

マルコス・テイシェイラ

 

知られざるボサノヴァギターの職人

 

 

主役の陰で淡々とリズムを刻み続ける、そんな裏方にスポットを
当ててみたい。

 

今回紹介するプレイヤーは ギターリスト Marcus Teixeira

 

日本ではあまり馴染みのないプレイヤーだが、テクニックはまさに職人技。

 

期待して頂きたい。

 


アルバム
Gal Costa Canta Tom Jobim

 

1999年にサンパウロ パラセ劇場で開催されたライブ映像。満を持して結成された最強のメンバーをバックに円熟期ガルの歌声が冴え渡る、名盤中の名盤。アレンジはお馴染みクリストヴァン・バストスが全編を担当、渡辺貞夫氏のツアーにも参加したアンドレ・ネイヴァのベース、今回ご紹介するマルコス・テイシェイラのギターワークは特筆に値する。ジョビンのオマージュ作品の中でも1,2を争うトップレベルの出来栄えと言える。


タワーレコードからのご購入はこちらから(DVD版)

 

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マルコス・テイシェイラのギターワークをご紹介しよう

 


ジョビンの名曲 「コルコバード」。
映像の検索キーワード: Gal Costa - Corcovado You Tube


 

マルコス・テイシェイラとの出会い

 

私は昔からガル・コスタの大ファンでありまして、彼女のリーダーアルバムは殆ど衝動的に買っていた。

 

動画や試聴サイトなどの便利な物がない時代だったので、それこそ当たるも八卦当たらぬも八卦。

 

ガルの歌については超一級品ですので勿論「ダメ」は出せないのだが、アルバムの出来不出来となると、選曲、編曲、演奏、録音状態 等々、色んな
要素が入り込んでくる。

そういった点で初期の作品を除いて決定的な名盤といえる作品が少ない。

 

歌は抜群であるから、どんなスタイル,ジャンルでもそつなくこなす。

 

だが、ホーザ・パーソスのようにバシッと一本筋が通っていない。

 

彼女の作品にはそんな物足りなさを感じていた、あれは2000年頃
だったと思う。

 

ガルのライブ盤が発売されたという情報を知り タイトルを見てみると、 Canta Tom Jobim

 

ブラジルミュージシャンらは1度 はジョビン曲集といったアルバムを
発表する。

 

ガルがリリースするとあって、すぐさま買いに走った。

 

早速聞いた1曲目の 「Fotografia」 では、美しいガットギターのイントロに始まり、ガルとのデュエットへと展開する。

 

素晴らしい! ところで ”このギター奏者” いったい誰だろう?

 

クレジットをみると Marcus Teixeira

 

この方が今回紹介するギターリストである。

 

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ガル・コスタ Canta Tom Jobim に於ける名演

 

彼のギターに触れる前に作品を紹介しておこう。

 

1999年にサンパウロのパラセ劇場で行われたガル・コスタ54歳の時の
ライブ盤。

 

C/Dに続いて映像を収録したDVD盤も発売されている。
演奏の内容からするとC/DとDVDは別の公演日と思われる。

 

ガルのコンディションもよく、艶やかな美声はまさに円熟の極み。

 

お馴染みのジョビンの名曲を集め、ガルのファンならずとも
ジョビンやボサノヴァファンにも大いに楽しめる作品だ。

 

サウンドを支えるプレイヤーの演奏力もさることながら ジョビンの曲と
ガルの歌を引き立てるアレンジが素晴らしい。

 

DVD版では観客の様子も含め実に臨場感溢れる作品に仕上がっている。

 

近年のガル・コスタの作品の中ではピカイチの傑作。

 

マルコス・テイシェイラのギタースタイル

 

彼のギター奏法について触れてみたい。

 

デサフィナードの映像を参考に、話を進めよう。

 

映像の検索キーワード: Gal Costa - Desafinado vevo You Tube


 

基本的には極めてオーソドックスなサンバ、ボサノヴァの演奏スタイル。

 

親指で弾くベースのバランス、タイムが実に正確でコードを弾く3本の指のバランス、粒立ちがよい。

 

しかもベース音が十分に伸びきっている。

 

弦上に指を乗せ一旦ミュートした状態で弦を弾いている。

 

開放弦は使用しないオーソドックスなオープンコードを使用し、
リズムに重点をおく、彼のポリシーが伝わってくる。

 

テンポが変わっても左手が移動するスピードは変わらない。

 

スローテンポの曲では左手の動きもルーズになりがちだが、
彼の左手はコードの移り際で素早く動いている。

 

これほど一糸乱れる事なく、ボサノヴァを演奏するギターリストは少ない。

 

おそらくスタジオワークを含め相当の場数を踏んでいるのであろう。

 

「Fotografia 」で聞かせるイントロのアレンジセンスもとても素晴らしく、主役のガルの歌を見事に引き立てながらスムーズにテーマへと導いている。

 

ボサノバギターはフラメンコやクラシックギターと比べて易しいと
捉えられがちだが、それは間違いである。

 

クラシックの大家でも彼のようなギターをそう易々と弾ける
ものではない。

 

Canta Tom Jobim おすすめ テイク

 

全曲が文句なしに素晴らしい。

 

特にマルコスのギターに注目して、印象深い演奏を3曲ほど挙げてみた。

Anos Dourados

ジョビン作の邦題「黄金の日々」でお馴染みの曲。

 

多くは静かなボサノバ、スローバラードで演奏されるが、ここでは
ラテンポップス調の8ビートにアレンジされている。

 

マルコスはここでも軽快な小気味のよいバッキングを展開しており、
リラックスした中、全編インプロバイズしている。

 

彼のリズムセンスの良さが光っている。

 

Bonita

この曲はジャズミュージシャンにも多く取り上げられている名曲。

 

ガルとマルコスのデュエットで始まるが、ギターアレンジも見事で
完璧に弾ききっている。

 

インテンポのところで、ホッと大きく深呼吸するマルコスの表情が
印象的だ。

 

こんな曲でイントロをでミスったら、はい、それでおしまい。

 

これほどのプロでも緊張するものだろうか。

 

Triste

アルバム中で最も早いテンポで演奏されている。

 

マルコスのビーバップ風のいかした間奏が聴ける。

 

彼のルーツがジャズである事がわかる。

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ブルーノート東京での演奏

 

2006年と記憶しているが、ガルと共に来日し、ブルーノート東京で1週間のライブを行っている。

 

初日と中日の2回、聴きに行ったが、音楽好きの私でも二度も足を運んだのはこれが最初で最後である。

 

リズムセクションはギター、ドラム、ベースのシンプルなトリオの編成。

 

この日のマルコスはアタッチメントは一切使用せず、ガットギターの生音で淡々と演奏するスタイル。

 

紹介したライブ盤とは異なり終始哀愁漂う、静かな雰囲気に包まれていた。

 

ガルがマルコスを紹介した時、一際大きな拍手が巻き起こり、ビックリした二人が思わず顔を見合わせる場面が印象に残っている。

 

他の観客も彼のギターの素晴らしを目の当りに実感したのであろう。

 

マルコス・テイシェイラのその後

 

2010年頃だと思うが別コーナーで紹介するサンパウロ出身のブルーノ・マンゲイラのバックを務める映像や、同じくサンパウロのジャズトリオ Trio Corrente のメンバー パウロ・パウレッリ、ファビオ・トレスらと共演する動画が公開されている。

 

彼の詳細な資料は見当たらないが、顔触れから察するにブラジル・ジャズ系のパウリスタかも知れない。

 

ちなみに、彼らはサンパウロのトップアーティストであり、ジャズに留まらず数多くのポップ・アーティストの制作にも携わっている。

 

更なる進化をとげて、また来日して頂きたい。

 

おすすめ 映像

検索キーワード

本DVDの公式チャネルサイト
本アルバムのライブ映像一部が公開されている。

 

検索キーワード :Gal Costa - Anos Dourados vevo - You Tube


 

検索キーワード :Gal Costa - Bonita vevo - You Tube


 

検索キーワード :Gal Costa - Samba do Aviao vevo - You Tube


 

Bruno Mangueiraとの共演

ブルーノマンゲイラのバックで演奏するマルコスの映像が公開されている。
髪が少々薄くなっているようだが、タイトな演奏は今なお健在だ。
検索キーワード :Bruno Mangueira | Samba pro Toninho (Bruno Mangueira)


 

Trio Corrente との共演

Trio Corrente のメンバー と多少緊張ぎみに共演する姿が映っている。
検索キーワード :Paulo Paulelli (Messias Santos Jr) | Instrumental SESC Brasil )Sesc em Sao Paulo JD3fKTk9SDY


 

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最後に

 

主役を支える裏方のプレーヤーに焦点をあててみた。

 

彼らの存在無くして、決して名演は生まれない。

 

また来日して頂き、切れ味のいいギターワークを聞かせてもらいたい。

 

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ノエル・ホーザの記事はこちら

 

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