イパネマの娘 | ボサノヴァを代表するミステリアスな名曲

 

 

イパネマの娘 (Garota de Ipanema )

 

 

ご存じイパネマの娘はジョビン、モライスの黄金コンビによって

 

1962年に発表された、今となってはボサノヴァの代名詞とも言える歌。

 

ボサノヴァ ブームの火付け役とのなったこの曲は、その誕生に纏わる数々の

 

逸話を残した事でも有名だ。

 

多くのエピソードを秘めた迷曲 「イパネマの娘」をご紹介する。

 

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スペイン語版のイパネマを聴いてみよう!

 

スペイン出身のハラベ・デ・パロが歌うお気に入りのテイク!
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La Chica de Ipanema - Jarabe de Palo


 

プロフィール

 

1962年 カーネギーホールにて開催された歴史的なボサノヴァ コンサートが成功を収め、それを踏み台にブラジル音楽はアメリカに渡る事になる。

 

彼らの音楽に目を付けたのは、後にCTI(Creed Taylor Incorporated)
レーベルを設立した名うてのヒット・メーカー、 クリード・テイラー
だった。

 

クリード・テイラー プロデュースの下、トム・ジョビン、ジョアン・ジルベルト、ジョアンの妻であるアストラッド・ジルベルトに加え、ジャズ界の大御所スタン・ゲッツ等によって、名盤GETZ/GILBERTが制作された。1963年の事である。

 

翌年1964年に発売されたこのアルバムは、翌年1965年のグラミー賞に於いて最優秀終アルバム賞を含む3部門を受賞し、シングル盤の
「イパネマの娘」は最優秀レコード賞を受賞した。

 

ビジネスとして大成功を収める一方、ブラジル音楽の理解に乏しいジャズマンの演奏や、制作側の強いコマーシャリズムが一部の音楽ファンの酷評を受ける結果となった。

 

各界の評価は分かれるものの、ブラジル音楽をいち早く世界に知らしめたこのアルバムのプロデューサー、 クリード・テイラーの功績は大きいと言わざるを得ない。

 

シングルカットされた「イパネマの娘」

 

L/P版の「イパネマの娘」は、1コーラス目をジョアン、2コーラス目がアストラッド、3コーラス目はスタン・ゲッツのソロ、4コーラス目のAメロをジョビン、サビの部分はアストラッドのボーカルにゲッツがオブリガードするといった構成だった。

 

一方、シングル・カットされた「イパネマの娘」はシングル盤に収まらないという理由で1コーラス目のジョアンの歌とゲッツのソロの大部分がカットされてしまう。その結果イントロの僅か4小節のジョアンのハミングを残し、テーマの殆どをアストラッドが英語で歌うという、ジョアンにとって屈辱的な代物になってしまった。

 

シングル盤を初めて聴いた方は、鼻にかかった聞き慣れないジョアンのイントロをさぞかし不思議に思っただろう。

 

参考までに2つのテイクをご紹介しよう。

アルバムに収録されているオリジナル版 「イパネマの娘」

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Stan Getz & Joao Gilberto - Getz/Gilberto (1963)


 

オリジナルを編集して作成されたシングル版「イパネマの娘」

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The Girl From Ipanema by Astrud Gilberto


 

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クリード・テイラーが描いたシナリオ

 

お聞きになって分かる通り、ジョアンのお供で同行したはずのアストラッド・ジルベルトのボーカルもフューチャーされている。

 

この事については、 クリード・テイラーの粋な計らいで彼女に歌わせたという説と、英語が堪能なアストラッドの根回しによって、当日クリード・テイラーがそれとなく歌わせたという 2つの説があるようだ。

 

はたして、シングル盤に収まらないとの理由で、偶然にも英語版の
「イパネマの娘」が生まれたのだろうか?・・・

 

並みのプロデューサーでも、シングル盤に収まらない事ぐらい、端から分かる筈だ。彼は最初からアルバム「GETZ/GILBERT」と 英語版「イパネマの娘」のカップリングを計画していたに違いない。

 

そこで問題になるのはオリジナルのジョビンのピアノ・ソロに続くサビからエンディングにかけた部分だ。このパートは曲の構成上カット出来ない。単にゲストとしてアストラッドを参加させたのであれば、このパートは主役のジョアンとゲッツに戻すのが常套だと思うが、敢えてアストラッドに歌わせている。このパートを仮にジョアンが歌ってしまうと、出来上がるシングル盤はアストラッドの歌で始まるものの、突如ジョアンのポルトガル語の歌が挿入されてしまう。このパートをアストラッドに歌わせ、ジョアンの1stコーラスをカットすると、英語版 「イパネマの娘」が誕生する。

 

因みに英語の歌詞はロバータ・フラックのグラミー受賞曲「やさしく歌って」の作詞を手掛けたノーマン・ギンベルにクリード・テイラーが依頼し、予め用意したものだった。

 

英語の歌詞を事前に準備し、2コーラス目以降は全て英語でアストラッドに歌わせ、最後にジョアンの歌をカットする。

 

英語の歌でなければヒットしないと確信していた、クリード・テイラーが
周到に仕組んだシナリオだろう。

 

ただ、このシングル盤には僅かであるがジョアンのイントロ、ゲッツのソロ、ジョビンのピアノが収録されている。切り貼りの編集によって3大スターの歌や演奏を残しつつ、英語版「イパネマの娘」を創りあげたクリード・テイラーの腕前はさすがだ。

 

スタジオでのエピソード

 

アルバムの制作現場ではスタン・ゲッツの態度やリズム・セクションの演奏に腹を立てたジョアンがポルトガル語で食って掛かる場面もあったそうだが、トム・ジョビンの機転でその場を収めたという。無論スタン・ゲッツはポルトガル語は分からないし、ジョアン・ジルベルトも英語が話せなかった。その際、トム・ジョビンはスタンゲッツに向かって「彼(ジョアン)はあなた(ゲッツ)に会えて光栄だ」と通訳したと言われている。

 

ご存じの方も多いと思うが ジョアン・ジルベルトは観客に向かって暴言を吐きその場でステージを降りたり、コンサートをドタキャンするなど破天荒なキャラクタでも知られ、一方のスタン・ゲッツは性格の悪さでは定評のあるアーティストだ。互いに言葉が分からない2人の争う様子は想像しただけでも笑ってしまう。

 

その後の ジョアンとアストラッド

 

ジョアンにとって、胸躍る筈のレコーディングがスタジオで喧嘩するわ、女房にお株を奪われるわで、踏んだり蹴ったりの旅になってしまった。
その後ジョアンとアストラッドは離婚するが、彼女は「イパネマの娘」のヒットを皮切りに、英語で歌うのボサノヴァを次々に発表し、遂には「ボサノヴァの女王」と言われるまでに至った。

 

一方のジョアン・ジルべトは、翌年1964年に「Getz/Gilberto 2」を発表するものの、次第にボサノヴァ ブームは終焉を迎え、その後1969年に単身 メキシコに渡り、長い不遇の時代を迎えてしまう。その時代に彼の代表作とも言われる、アルバム「Ela E CArioca」(彼女はカリオカ)を残している。

アルバム「Ela E CArioca」からお気に入りのテイクをご紹介します

検索キーワード:
Joao Gilberto - De Conversa Em Conversa


 

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スタン・ゲッツについて

 

性格の悪さばかりを強調してしまったが、スタン・ゲッツはマイケル・ブレッカーと並ぶ20世紀を代表するテナー奏者だ。L/P盤だが彼の作品の多くを所有していた。中でも J.Jジョンソンと共演した「At The Opera House 」は素晴らしく 歌心溢れる「My Funny Valentine 」を必死にコピーした思い出がある。

オペラ・ハウスの My Funny Valentine をお聞きください

検索キーワード:
Stan Getz My Funny Valentine At Opera House


 

楽曲

 

この曲のオリジナルはD♭と記憶しているが、多くのジャズマンやヴォーカリストに取り上げられた為、色々なキーで演奏されている。ジャズの世界ではFが定番みたいだが、今回はE♭でアレンジしてみた。アレンジと言うほどではないが、右手のリズムを工夫して頂きたい。

 


・指板上の 数字は2拍子、4分音符の拍数。
・指板下の丸数字はフレットの位置。
・○は開放弦。

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おすすめの映像

ガル・コスタが歌う「イパネマの娘」

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Gal Costa - Garota De Ipanema VEVO


 

フランク・シナトラが歌う「イパネマの娘」

検索キーワード:
Frank Sinatra - "The Girl From Ipanema" (Concert Collection)


 

最後に

 

天才 アントニオ・カルロス・ジョビン作曲による「イパネマの娘」は

 

鬼才クリード・テイラーのプロデュースの下、2人の天才アーティスト

 

によって世界中にボサノヴァブームを巻き起こした。

 

そうして、半世紀たった今でも 我々はコーヒー・ショップで

 

日夜「イパネマの娘」を聴いている訳である。

 

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