ドリ・カイミ | ブラジルが生んだ コードの魔術師

 

ドリ カイミ

 

ブラジルが生んだ コードの魔術師

 

 

今回ご紹介するギタリストは少々変わっている。

 

彼のシングル・トーンのソロを一度も聞いたことがない。

 

たった2本のナイロン・ストリングで空気を変えてしまうコードの魔術師。

 

ドリ・カイミ氏である。

 

 


アルバム:Influencias

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解説

ノエル・ホーザの古典、ジョビン、アリ・バホーゾ、バーデン・パウェルなどの名曲をドリ流のアレンジで仕上げたアルバム。ノエルの名曲 Conversa botequimではガル・コスタとのデユエットも楽しめる。楽しいポップ調の中に彼独特のコード・ワークも存在感があり Faceira, Berimbau などは特にアレンジが素晴らしい。ドリの作品には個性が強い難解なものもみられるが、このアルバムは誰にでもストレートに楽しめる内容である。


ノエル・ホーザの記事はこちら

 

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ドリ・カイミ の音楽 

 

まずは彼の演奏を聴いてみよう。

 

ブラジル音楽を知らない方でもどこかで必ず一度は聞いたことがある曲
Aquarela Do Brasil」(ブラジルの水彩画)である.

 

この映像の2曲目(5:30)で演奏している。

 

映像検索キーワード:
Dori Caymmi | Programa Instrumental Sesc Brasil



 

アルバム 「Kicking Cans」に収録されている同曲のアレンジである。

 

緊張感のある大胆なコードチェンジの後にスーっと

 

オリジナルの楽曲へ繋げていく。

 

この辺がドリの真骨頂だ。

 

ドリ・カイミ のプロフィール 

 

彼のプロフィールを簡単にご紹介する。

 

1943年リオ出身。MPB界で共に活躍してきた 実 姉ナナ・カイミ、実弟 ダニーロ・カイミをもつ 音楽一家の長男として生まれた。

 

ドリは20代から既にリオを中心に活躍しており、カエターノ、ジョイス、ガル・コスタ、ナラ・レオン等のアルバムの制作にアレンジャー、ギター
奏者として参画しており、彼のファースト・アルバムでは自らオーケストラのアレンジをも手掛ける才人である。

 

彼の編曲は単なるヘッドアレンジではなく、リズム、構成、コードアレンジ、ストリングの細部に至ると言われている。

 

その意味で、ドリが裏方としてサポートした数々のアルバムは彼の作品と言っても良い。

 

彼の手にかかると、どんな曲であろうと魔法にでもかけられたように、
ガラリと変身する。

 

ケヴィン・レトーのBye Bye Black Bird然り、

 

小野リサのカントリー・ロード然りである。

 

作曲家としても知られる彼の作品「O Cantador」(英題 Like a Lover)はジャズ・ミュージシャンを始め多くの演奏家に取り上げられている。

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ドリ・カイミ のギターコードワーク

 

彼のギターの特徴は大胆なコード・チェンジ、リハーモナイズ、変則チューニングをも用いた色彩豊かなコード・ワークにある。

 

開放弦も多用し、短2度(半音)による緊張度の高いコードを好んで使う。

 

例えばドリ風のコードを考えてみた。

 

Em - Am - Em - B7 といったよくあるコード進行だが、
開放弦を使い内声に短2度を仕込むとドリ風のカラーがでる。

 

 

次に「黒いオルフェ」のイントロと出だしのコードチェンジを載せた。
キーはオリジナルのEm。

 

・コードの右側の ×2表記は2拍子で2拍,無表記は1拍
・指板の下の数字はフレットの位置。
・〇は開放弦。

※1 イントロ部はこのポジションで旋律もカバーできる

 

彼がよく使う手法であるが、オリジナルはトニック(Em)で始まるが
ドミナント・モーションを使って5小節目のトニックに向かって
アプローチしている。

 

過去、インスト・バンドでこれをやったら「気持ち悪いから、やめてくれ」と言われてしまった。

 

ライブでの思い出

 

ドリの最近の動向はキャッチアップしていないが、最後に彼の演奏を
聴いたのは2005年の横浜モーションブルーである。

 

確かジョイスと新しいアルバムをリリースした直後で、彼女に同行して
来日していた。

 

余談だが、この店はチャージも安く、店もやや狭く臨場感があって
気に入っている。

 

メンバーが慌ただしくセッティングをしている最中、ライトの当たらない
隅のカウンターで1人酒を立ち飲みしているシルエットが見えた。
(勝手に酒と判断したのだが)

 

ドリ・カイミである。

 

大物の貫禄である。全く手伝う様子はない。

 

ドリはジョイスが10代の頃からサポートしてきた大先輩とあって、
ステージではしきりに"主役はドリ"と言わんばかりに褒めちぎって
いたのを覚えている。

 

ラストの「Birimbau」の演奏では巨匠お得意の拳を使ったガッツ・
ポーズが炸裂していた。

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アルバム 「influencias」 について

私の気に入っている曲をいくつか紹介しよう。

Conversa botequim (居酒屋)

ノエル・ホーザの名曲。ノエルは1937年に27歳の若さで生涯を終えた歌手兼、作曲家。およ80年前の、いわば古典である。確かに当時の年代を感じさせる、何とも哀愁漂うメロディーであるが、ドリの都会的なアレンジ、ガル・コスタの澄み切ったヴォイスによって現代風にリメークされている。エリス・レジーナの娘マリア・ヒータなども歌っており、今も伝わる楽しい曲である。

Faceira(ファセイラ)

Ary Barroso(アリ・バロッソ)によって1930年代に作曲された有名な作品。ホーザ・パーソスを始め現代のアーティストにも広く取り上げられているお馴染みのナンバー。ドリのアレンジがとにかく素晴らしい。リズムやピアノ、ギター、パーカッションの絡み方まで、細かなアレンジが行き届いている。リトナーバンドでも共演していたパウリーニョ・ダ・コスタ、エイブラハム・ラボリエル等のリズムセクションも実に息が合っている。

Belimbau(ビリンバウ)

バーデン・パウウェル、ヴィニシウス・ヂ・モライスによる広く知られた名曲。ドリの真骨頂ともいえるアマゾンの奥地を想わせるような深遠なアレンジが光る。まさにドリの空気である。ここで見せるドリのコード・ワークはギターを志すプレイヤーには絶好の教材である。ドリ自身も気に入っているのか、ライブではよく演奏される。私にとっても最高の「ビリンバウ」である。

 

他にもドリの変則チューニンが聴ける「Acontece Que Eu Sou Baiano」、大胆なコード・アレンジで原曲を留めない「Desafinado」など、興味深い演奏も収録。

 

MBPファンならずとも、ジャズファン、ポップスファンまで広く楽しめるアルバムだ。

 

おすすめ 関連作品

 


アルバム: Kicking Cans

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解説

1993年アメリカで製作されたブラジリアン・フュージョンである。ドン・グルーシンを始めエイブラハム・ラボリエル、ジェリー・ワッツ、ブランフォード・マリサレス、ハービー・ハンコック、パウリーニョ・ド・コスタ、ブジリアン・ギターリストのリカルド・シルベリアといった豪華メンバーが参加。冒頭で紹介した斬新なアレンジの「ブラジルの水彩画」を含む全10曲。ブラジル・テーストの香りを漂わせつつ、都会的なアメリカン・フュージョンに仕上がっている。必聴版である。

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おすすめ 映像

Take Me Home Country Roads

小野リサさんのアルバム 「Jambalaya - Bossa Americana -」から
ドリ・カイミのアレンジのセンスが如何なく発揮された作品。
最高のアレンジをバックにリサさんの爽やかな歌声が大変素敵です。
ドリ・カイミ ワールドをお楽しみください。

 

検索キーワード:
You Tube Take Me Home Country Roads imgtsinger



 

O Cantador

彼の代表作である名曲「O Cantador」

 

検索キーワード:
Dori Caymmi - Like a Lover (O Cantador) - 1988



 

Bee Hive

1992年日本で開催されたジャズ・フェスティバル 「Live Under The Sky」の超レア映像。若かりしホメロ・ルバンボ、ベースの達人ニコ・アスンサウン、ビリー・コブハムなどの顔ぶれも懐かしい。
エンディングではドリお得意の拳が炸裂! ノリノリのドリ ダア!

 

検索キーワード:
Bee Hive" Live Under The Sky 92 LARRY CORYELL

 

 

Um cafe la em casa com

 


Nelson Faria & Dori Caymmi



 

最後に

 

私のにとってドリ・カイミはトニーニョ・オルタに並ぶ巨匠。

 

ブラジリアン・ギターを勉強する方々にも大いに参考になる
プレイヤーだと思う。

 

目立たない演奏家であるが、耳を澄まして彼のガット・ギターを聴いて
もらいたい。必ず、新しい音が聞こえてくる。

 

今後もドリの作品を取り上げていく。

 

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関連記事 ケヴィン・レトーの投稿はこちら

 

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